福祉医療機構(WAM)は、社会福祉施設や介護事業施設、医療施設などの事業者や施設を対象として、福祉医療の基盤強化をサポートしている独立行政法人です。また、福祉医療機構では介護事業者などの資金繰りの課題や悩みの解決を支援する取り組みとして、社会福祉施設の整備費用や建築資金などを融資する「福祉医療貸付制度」を実施しています。
このページでは、福祉医療機構の福祉医療貸付制度について解説します。
独立行政法人福祉医療機構(WAM)は、厚生労働省・こども家庭庁が所管している独立行政法人であり、独立行政法人福祉医療機構法にもとづいて運営されている公的機関です。
平成15年10月の設立以来、少子高齢化が深刻化している日本社会において、全ての国民が安心安全な暮らしを叶えられるための環境づくりをめざしており、社会福祉事業や医療事業に対して多角的なサポートを実施しながら、適切な福祉医療体制の基盤構築を推進しています。
福祉医療機構では、「福祉貸付事業」と「医療貸付事業」という2つの貸付制度を通して、日本国内の社会福祉法人や医療法人、NPO法人などの事業運営や施設拡充を支援していることがポイントです。
福祉貸付事業では主として社会福祉施設の整備費用や建築資金に関して融資を行っており、医療貸付事業では診療所や病院といった医療関係施設と、介護老人保健施設・介護医療院に対して施設整備や設置に関する費用の融資を行っています。
どちらの融資も「長期・固定・低利」がコンセプトになっていることも重要です。
※参考元:独立行政法人福祉医療機構(https://www.wam.go.jp/hp/)
介護施設や介護事業者といった社会福祉法人が利用できる福祉医療貸付制度のメリットとして、まず償還期間が最長30年という長期融資になっていることは見逃せません。
返済期間を長期に設定することで、毎月の借入金の返済額を小さくコントロールすることが可能になり、年間を通しても事業所の負担を軽減しながらマネジメントしていきやすくなっています。
福祉医療貸付制度では、貸付利率が全期間もしくは一定期間(10年ごと)において固定されていることもメリットです。
固定金利になっているため、借入時点で利息分の計算や返済シミュレーションが可能になり、長期的な返済計画を具体的に構築することができます。また変動金利による借り入れ後の金利上昇リスクにも対応しています。
福祉医療貸付制度の事業理念として「低利」が掲げられており、公的融資として貸付利率が低めに設定されていることも重要です。
貸付利率については令和5年10月2日に改定されており、例えば福祉貸付事業の場合は年利0.700~1.700%、医療貸付事業の場合は年利0.700~2.000%となっており、実際の貸付利率は施設の種類や償還期間などの条件に応じて決定されます。
福祉貸付事業では、民間の社会福祉事業施設などを対象として、施設の整備や設備の拡充を支援していることが特徴です。
社会福祉事業者に対しては国や地方公共団体から様々な整備費の補助が行われている反面、事業者もまた相応の費用負担を行わなければなりません。そのため、福祉貸付事業ではそのような民間事業者の負担部分を融資によってサポートすることで、福祉事業者の経営を下支えしながら地域の社会福祉サービスの安定を目指しています。
※参考元:独立行政法人福祉医療機構(https://www.wam.go.jp/hp/cat/fukusikasituke/)
福祉貸付事業で融資を受けられる対象施設や対象時業者は主として以下のようなものとなります。
福祉貸付事業は介護施設や社会福祉サービス事業所、児童福祉施設など様々な施設や事業所を対象としており、これらの整備費用などのために融資を利用可能です。
なお、融資を申し込める利用者は社会福祉法人や一般社団法人、医療法人などとなります。
実際の対象条件については改めて福祉医療機構の窓口へお問い合わせください。
福祉貸付事業で融資している資金の用途は、社会福祉施設の建築や拡張、改造などのための建築資金や土地取得資金、さらに機械器具や備品を整備するための設備備品整備資金です。
また、融資可能な金額の限度は、基準事業費から法的・制度的補助金等を控除した金額に対して、指定の融資率を乗算して決定されます。
施設ごとの融資率は「80%・75%・70%」となっており、施設の条件や事業内容などによって個々に設定される点が特徴です。
なお「基準事業費」は定員1人あたりの基準単価と利用人数や、福祉医療機構が認定した機構基準費などの合算となります。
令和5年10月2日に貸付利率が改定されており、福祉貸付事業における貸付利率は「年利0.700~1.700%」と定められています。なお、実際の貸付利率は施設の種類や事業内容などにもとづいて決定されることに加えて、全期間もしくは一定期間(10年経過ごとの見直し)の固定金利になることもポイントです。
償還期間が10年以下の場合は全期間の固定金利となり、10年以上の償還期間となる場合は全期間の固定金利にするか10年経過ごとに貸付利率の再適用を受けるか、申請者が選択できます。
福祉貸付事業において、原則として以下の担保提供が必要です。
なお、融資対象の担保順位は原則第1順位ですが、申込み内容によって相談可能となっています。
保証人については、「保証人不要制度」か、法人代表者など個人の連帯保証人を設定する「個人保証」のいずれかを選択可能です。ただし保証人不要の場合は貸付利率に一定利率が上乗せされます。
対象となる施設や事業を前提として、福祉貸付事業における融資の申込みから資金交付や完成報告までは以下のような流れになります。
なお、事業者が申し込む直接貸付でなく、代理貸付の場合は各代理店に相談してください。
まずは福祉貸付事業融資の使用や適合性について融資相談窓口へ相談します。相談先となる窓口は地域や組織によって分類されています。
なお、融資相談を希望する際にはあらかじめ作成した「融資相談票(資金計画・整備計画)」や直近2カ年分の決算書、残高試算表、収入支出償還計画票、その他事業や施設に関する資料などを準備しておきましょう。
融資対象だと確認できれば、改めて借入申込を行います。借入申込書へ施設を管轄している都道府県や市町村など自治体からの意見書を添付した上で、申込書を提出します。
なお、借入申込書を提出する時期は、工事請負契約や土地・建物の売買契約が締結されるおよそ1ヶ月前に提出するようにしてください。
借入申込書が受理されると、改めて借入申込受理票が郵送されてきます。なお、融資相談を事前に行っていなくても申込みは可能ですが、受理までの期間が長くなる点に要注意です。
申込受理票が届くまで工事着工や契約締結を待つ必要があり、業者への支払いは必ず振込とすべきこともポイントです。
融資審査はおよそ1ヶ月程度が見込まれていますが、場合によってさらに長い時間が必要となります。
融資審査に合格すれば、利用者にとって資金が必要となる時期に合わせて貸付契約締結や抵当権設定といった手続きが行われます。なお、これらの手続きが完了するまでおよそ3ヶ月程度の期間がかかる点に注意してください。
資金交付は原則として抵当権設定後になります。
交付された資金を活用して融資対象事業が完成した後は、おおむね3ヶ月以内に「事業完成報告書」の提出が必要です。
※参考元:独立行政法人福祉医療機構「2023年度福祉貸付事業融資のごあんない」(https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/2023_fukushi-kashitsuke_yuushinogoannai.pdf)
医療貸付事業は、地域の医療・介護サービスの良質な提供環境をサポートするために用意されている福祉医療貸付制度です。医療・介護に対するニーズの高まりに応えられるよう、福祉医療機構と国や都道府県などの地方公共団体が連携しながら、長期・固定・低利の融資によって医療法人や社会福祉法人といった事業者の経営を支援しています。
福祉貸付事業よりも医療分野の施設や事業者に対する融資として設定されていることが特徴です。
※参考元:独立行政法人福祉医療機構(https://www.wam.go.jp/hp/cat/iryohikasituke/)
医療貸付事業の対象施設は主として病院や診療所といった医療機関や、高齢者や障害者のために医師の管理下で多角的なケアサービスやサポートを提供する介護老人保健施設や介護医療医院、その他にも指定訪問看護事業所や医療従事者養成施設、助産所などが設定されています。
加えて、医療貸付事業の融資を利用できる者は医療法人や一般社団法人・一般財団法人、社会福祉法人といった各種法人に加えて、個人でも利用可能になっている点も重要です。
なお、医療貸付事業における直接貸付と代理貸付について、介護老人保健施設や介護医療医院は「直接貸付」のみが利用できます。
医療貸付事業では、対象施設の新築や増改築、賃借などにかかる建築資金と土地取得資金、そして医療機械や備品などの機械購入資金が「設置・整備資金」として設定されています。また、その他にも経営安定化のために必要な資金として「長期運転資金」も利用できます。
ただし、機械購入資金と長期運転資金の一部については病院を対象外にしている点に注意してください。
融資限度額は対象施設や資金の用途に応じて異なっており、所要額に申請者ごとの融資率を乗算した金額と、担保評価額の80%の、いずれか低い方の金額が上限となります。
令和5年10月2日の改定により、医療貸付事業の貸付利率は「年利0.700~2.000%」となっており、実際の利率に関しては施設の種類や事業内容などを勘案して決定されることに注意してください。
なお、福祉貸付事業と同様に医療貸付事業においても貸付利率は「固定」となっており、償還期間が10年以下の場合は全期間の固定金利となります。償還期間が10年以上になる場合は、全期間の固定か、10年経過ごとの利率の再適用を選ぶか、選択できることも同様です。
医療貸付事業における担保や保証人の条件は、福祉貸付事業と同様に以下の通りとなっています。
融資対象の担保順位は原則第1順位ですが、申込み内容によって相談可能です。
なお、医療貸付事業の場合、介護老人保健施設や介護医療医院の経営安定化資金(長期運転資金)に関しては、介護ファクタリングのように介護診療報酬債権を担保として設定できる点も特徴です。介護診療報酬債権を担保とする場合、診療報酬月額等の2倍以内が担保となります。
保証人については「保証人不要制度」と「個人保証」を選べる上、審査の結果によっては保証人が免除されることもあります。
医療貸付事業融資における直接貸付の流れは以下のようになります。基本的には福祉貸付事業融資のパターンと同様ですが、細かい部分で手続きの方法などが異なっている点に注意してください。
医療貸付事業融資の相談窓口は施設の開設地で分類されており、東日本、西日本、沖縄の3つのエリアごとに決められています。
また相談時には法人の沿革や計画趣意書、計画図面、収支計画・償還計画書、直近2カ年分の決算書といった各種書類を用意しておくことが望ましいでしょう。なお、基本設計へ着手する前の計画初期段階から相談することが推奨されています。
融資相談によって提出された事業計画や資金計画、収支返済計画などについて妥当性があると認められた場合、借入申込書が郵送されてくるため、必要事項を記入して提出してください。
なお借入申込書には、病院・有床診療所であれば都道府県知事の証明書、介護老人保健施設・介護医療院であれば意見書の添付がそれぞれ必要です。
借入申込書や関連書類の内容をチェックして、融資の可否を決める受理審査が行われます。受理審査に要する時間は借入申込書が到着してからおおむね2ヶ月程度とされており、審査に合格した後に「貸付内定通知書」が郵送されます。
貸付内定が出た後、貸付契約の締結と抵当権の設定手続きを経た上で、利用者と機構が相談して送金時期が決定される点に注意してください。そのため、抵当権の設定手続きの流れや融資条件などによっては、希望する時期に資金交付が行われない場合もあります。
事業が完成した後、おおむね3ヶ月以内に事業完成報告書を提出しなければなりません。
※参考元:独立行政法人福祉医療機構「2023年度医療貸付事業融資のごあんない」(https://www.wam.go.jp/hp/wp-content/uploads/2023_iryou-kashitsuke_yuushinogoannai.pdf)
福祉医療機構は社会福祉事業者や医療事業者の経営をサポートするための独立行政法人であり、福祉医療貸付制度では介護事業者や社会福祉事業者が融資を受けることもできます。
反面、担保や保証人が原則必要といった条件もあり、長期的な運営資産をまかなうのでなく、一時的な資金調達に関しては介護報酬担保ローンや介護ファクタリングが適している場合もあるでしょう。
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