中小の介護事業者・障害福祉事業者のための資金繰り解決Navi

訪問介護事業(ホームヘルパー)の資金調達

ヘルパーの資格を持っていれば、訪問介護事業を立ち上げること自体はそれほど難しくありません。ただし、事業所を開業するとなると、一定の開業資金やある程度の運転資金が必要です。介護事業は資金繰りが独特というのもあり、資金調達方法を把握しておかないと、せっかく事業を立ち上げても資金不足に陥りやすくなります。

ここでは、訪問介護事業が資金不足に陥る原因や資金調達方法について解説します。

目次

訪問介護とは

そもそも訪問介護とは、自分や家族だけで日常生活を送ることが難しくなった要介護者に対し、可能な限り自立した生活を送ることができるよう、訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問して食事や排せつ、入浴などの介護や掃除、洗濯、調理、外出移動などのサポートを行うことです。

訪問介護を受けられるのは「要介護1以上」と認定された人のみで、自宅のほか軽費老人ホーム有料老人ホームで生活を送る人であれば利用できます。

訪問介護事業(ホームヘルパー)が資金不足に陥る3つの原因

人件費の負担が大きい

訪問介護を含む介護事業は人手があってこそ成り立つ業種で、高齢者にさまざまなサポートを提供するために人員の雇用は必要不可欠です。運転資金の大半を人件費が占めると言っても過言ではなく、人員を雇用するための人件費をいかに確保するかが介護事業の課題となります。

また、人件費は介護サービスの利用が少ない月でも、固定費として発生するのが事業主としてはつらいところです。事業主には人件費を確保するために安定した売上を常に確保しながら、適切な人員管理を行なうことが求められます。

介護保険をすぐに受け取れない

介護事業が資金不足に陥る大きな原因となるのが、介護保険をすぐに受け取れないことです。介護事業者は前月に提供したサービスを翌月10日くらいまでに国保連に請求しますが、審査が行なわれたうえで入金されるのは請求した月の翌月末になります。分かりやすいように、サービスの提供から入金までの流れの例を見てみましょう。

  • 3月1日:介護サービスを提供
  • 4月1日~4月10日:介護保険を国保連に請求
  • 5月25日前後:介護保険が入金される

このように介護サービスは提供から入金まで最大3カ月のタイムラグがあることから、資金不足に陥りやすくなるのです。安定して経営するためには、手元に3カ月分以上の運転資金を確保しておく必要があります。

開業後すぐは融資を断られやすい

訪問介護事業を立ち上げたばかりの事業者は、銀行から融資を受けるのが難しいと言われています。その理由としては営業実績が何もない、または開業時に銀行から必要な資金の融資を受けているためです。特に開業時に銀行から融資を受けている場合、1年以上の間隔が空いていないと銀行からの融資はまず受けられません。

銀行は前回の融資から1年未満の会社には融資を行なわないことを原則としているので、追加での融資の相談をしても良い返事をもらえることは難しいと考えたほうが良いでしょう。開業から間もない状態では銀行からの融資を受けにくいというのも、訪問介護事業が資金不足に陥る原因になっています。

訪問介護事業(ホームヘルパー)の開業にかかる資金

訪問介護事業の開業にあたって、以下のような資金がかかります。

法人設立費用

訪問介護事業を立ち上げる際の設立費用がかかります。法人形態によっても異なりますが、法人設立のためには約10~20万円が必要です。

不動産

開業申請を行うには、事業所の立地を決めて場所を確保しておく必要があります。さらに、訪問介護の設備基準を満たしておかなくてはならないため、事業所の家賃や場合によっては改装費がかかります。

設備・備品・消耗品

事業所内の事務所には、事務机やいす、従業員のロッカーなどの備品や固定電話、携帯電話、パソコンなどの機器、基本的な事務用品や消耗品が必要です。

人件費

訪問介護を開業するには人員基準を満たす必要があり、開業前から人員を確保しなくてはなりません。開業サービスを開始する前であっても人員の給与は発生するため、人件費はあらかじめ用意しておく必要があります。

広告宣伝費

チラシなどの広告や名刺作成のほか、必要に応じてホームページの制作費や媒体への掲載費などの宣伝広告費が必要です。

運転資金

訪問介護に限らず必要な資金ですが、事業を運営するにあたり毎月の家賃のほかにも電気・水道などの光熱費、通信費、車両費・燃料費、保険費用などの運転資金がかかります。

訪問介護事業(ホームヘルパー)の資金調達方法

訪問介護事業者が資金調達を考える際、候補に上がるのが「銀行からの融資」「介護ファクタリング」「介護報酬担保ローン」の3つです。開業してすぐの事業者の場合は銀行からの融資が難しい場合もあるため、介護ファクタリングか介護報酬担保ローンを検討することになるでしょう。それぞれの資金調達方法の特徴について解説します。

銀行から融資を受ける

自己資金がない事業者が運転資金を調達するには、銀行から3カ月分程度の運転資金を融資してもらう方法があります。

ただし、開業前に設備資金の融資を受けていると、開業後すぐに運転資金の融資を追加で受けるのが難しくなってしまうので、開業前に設備資金と合わせて運転資金の融資も相談しておきましょう。そのためにも、必要な運転資金がいくらになるのか、開業前にしっかりと資金繰りの計画を立てておくことが大切です。

開業前でも資金の融資を受けられるのか不安な方もいるかもしれませんが、訪問介護のように保険が適用される事業の場合、銀行から安定している事業所として判断されます。それにより開業前でも融資を受けやすいため、介護保険の入金までのタイムラグを補填するのに必要な3カ月分の運転資金を銀行から借りておきましょう。

訪問介護事業者なら、1~2%前後の低金利で借入できる可能性があります。

金融機関から融資を受ける流れ

金融機関から融資を受けるためには、まず必要な書類を揃えなくてはなりません。必要な書類は金融機関によって異なりますが、多くの場合決算書3期分と事業計画書、資金繰り表(資金計画書)、事業所のパンフレットや法人の概要などが必要です。その後、事前に金融機関へ連絡してアポイントをとり、書類を持参して融資の相談をします。

担当者との面談を重ね、審査が通ったら契約を行います。金融機関から融資を受ける場合、初回面談から資金が入金されるまでの期間は約1~2か月です。

金融機関から融資を受けるためのポイント

目的を明確にする

何のために融資を受けるのか、必ず目的を明確にしましょう。訪問介護事業所が融資を受ける目的の具体的な例として「訪問介護用の自動車を購入したい」や「事業所を移転・または新築したい」、「赤字による影響で資金が不足しているため、運転資金を確保したい」「人材を増員するための費用を確保したい」などが挙げられます。

返済能力を示す

金融機関は、貸した資金を確実に返済できるかを重視しています。返済能力を示すためには、決算書や収支計画書などで収入や利益を上げている事業であることを証明しなくてはなりません。今まで以上に収益を上げるために設備や人材へ投資するといった前向きな目的であることを示し、計画的に返済していくと書類で示しましょう。

いくら融資が必要か明確に説明する

目的や返済計画と同じく重要なのが、必要な資金額を明確にすることです。目的を実行するためにはいくらかの融資を受ける必要がある、と説明できるようにしておかなくてはなりません。

手元にいくらか自己資金があり不足分の融資を受けたい場合、「総額いくらが必要で、そのうちいくらを自己資金で用意する、不足分の融資をいくら受けたい」と説明できるよう、書類も準備しておくようにしてください。

介護ファクタリングを利用する

銀行から運転資金の融資を断られた場合、介護ファクタリングも資金調達方法の候補として検討しましょう

介護ファクタリングは介護報酬債権の譲渡を条件に介護保険を約8割程度で買い取ってもらう方法で、入金に最大3カ月かかる介護保険を最短2日で資金化できるのが魅力です。そのため、すぐに資金が欲しい人に適しています。また、介護ファクタリングは担保や保証人が原則不要で、借入扱いにならないのも特徴です。それにより、銀行の融資枠を温存しながら資金を調達できます。

一方で、他の融資と比べて割高な手数料がかかり、受け取れる介護報酬が少なくなるデメリットもあり。介護ファクタリングは給料の前借りをしているのと同じようなもので、一度利用するとその便利さに依存してしまい、通常のサイクルに戻せずに自転車操業に陥るリスクもあります。

介護報酬担保ローンを利用する

介護報酬担保ローンは、介護報酬を担保に金融機関やノンバンクから融資を受ける方法です。まとまった資金を調達できるほか、使途にも制限が設けられていないことが多いため、未納分の税金や借入金をまとめて返済したい人に有効です。

また、介護ファクタリングよりも受け取れる金額が多く、月々の返済の範囲も経営状況に合わせて相談することが可能。中長期スパンでキャッシュフローを安定化でき、銀行融資までの繋ぎが欲しい人や現在利用している介護ファクタリングを辞めたい人などにも適しています。

ただし、介護報酬担保ローンを利用するには、書類審査を通らないといけません。また、借り入れ扱いになるため、それを踏まえたうえで利用を検討する必要があります。

訪問介護事業(ホームヘルパー)を開業する流れ

資金調達の目処がたったら、いよいよ開業に向けて準備スタートです。訪問介護事業の開業は、以下のような流れで進めていきます。

法人を設立する

訪問介護は事業、介護保険サービスで主な収益を得る「介護保険事業」です。介護保険事業を営むのは法人に限られているため、まずは法人を設立しなくてはなりません。一般的に訪問介護事業で使用される法人形態は、株式会社、合同会社、NPO法人、社会福祉法人、一般社団法人などです。法人形態を決めたら、それぞれの法人設立の手順にしたがって法人を設立しましょう。

場所を決める

法人を設立したら、次に事業所を設置する場所を決めます。訪問介護事業の場合、指定された設備基準を満たすことが求められます。訪問介護事業を行いたい旨を事前に不動産会社に相談して、基準に沿える物件を選定しましょう。

指定基準を満たす

訪問介護の指定を受けるためには、以下3つの指定基準をすべて満たす必要があります。

人員基準

訪問介護事業では、最低限配置しなくてはならない職種や人数の基準が定められています。

訪問介護員(ホームヘルパー)は常勤換算で2.5人以上、サービス提供責任者は利用者40人ごとに常勤1人以上、訪問介護の管理者が常勤で1人必要です。訪問介護の管理者に資格要件はありませんが、訪問介護員(ホームヘルパー)やサービス提供責任者には資格要件があります。

また、自治体によってサービス提供責任者や訪問介護員の人数の条件には違いがあります。自治体の条件も事前に確認し、人員をあらかじめ確保しておきましょう。

設備基準

訪問介護は利用者が通所するサービスではないため、事務室を設置すれば設備基準を満たせます。スペースに余裕があれば、来所者と話し合いをする相談スペースや利用者さんのケアに使用する備品を保管する衛生スペースがあると良いでしょう。

運営基準

訪問介護事業の運営基準には、大きく分けて訪問介護サービスに関する基準と業務運営に関する基準の2つがあり、それぞれを満たしている必要があります。各運営基準の主な項目は以下の通りです。

訪問介護サービスに関する基準
  • 内容・手続の説明および同意
  • 提供拒否の禁止
  • サービス提供困難時の対応
  • 受給資格等の確認
  • 要介護認定の申請に係る援助
  • 心身の状況等の把握
  • 居宅介護支援事業者等との連携
  • 法定代理受領サービスの提供を受けるための援助
  • 居宅サービス計画に沿ったサービス提供と居宅サービス計画等の変更援助
  • 身分を証する書類の携行
  • サービス提供の記録
  • 保険給付の請求のための証明書の交付
  • 同居家族に対するサービス提供の禁止
  • 緊急・事故発生時等の対応
業務運営に関する基準
  • 利用料等の受領
  • 指定訪問介護の基本・および具体的取扱方針
  • 訪問介護計画・運営規定の作成
  • 利用者に関する保険者市町村への通知
  • 管理者及びサービス提供責任者の責務
  • 介護等の総合的な提供
  • 勤務体制の確保等
  • 衛生管理・掲示
  • 秘密保持等
  • 広告
  • 居宅介護支援事業者に対する利益供与の禁止
  • 苦情処理・地域との連携
  • 会計の区分・記録の整備

指定申請書類を提出する

指定基準を満たしたら、都道府県や市区町村に指定申請書類を提出し、審査を受けます。指定を受けていない状態で訪問介護事業所を開設することはできませんので、必ず指定を受けてから事業をスタートさせましょう。

Selection
資金繰りにお困りの中小介護事業者に
ローンorファクタリング業者3選

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エヌエスパートナーズ_公式HPキャプチャ
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・「介護報酬担保ローン」の記載 ・「融資額」の記載 ・「担保」の記載(介護給付費など)
(2022年3月7日調査時点)