介護事業を立ち上げたものの、経営が上手くいかずに悩んでいる事業者の方もいるでしょう。ここでは、介護業界で取り組めるコスト削減の方法を紹介します。また、今すぐ資金を調達したい場合の方法についてもまとめているので、参考にしてください。
コスト意識の高さが求められるのは、介護業界だけの話ではありません。ただ、数ある事業のなかでも特に介護事業でコスト削減が特に重視される一番の理由は「得られる収入額に上限があること」です。
たとえば入所50床・ショートステイ20床の特別養護老人ホームの場合、最大の収入を得るには入所の50床を要介護度5の方で満たし、さらにショートステイの稼働率を100%にする必要があります。介護業界は介護保険という枠組みによって収入の上限額が定められているからこそ、利益を少しでも確保するためにコスト削減が必須事項として重要視されているのです。
介護事業にかかる経費で最も大きなウエイトを占めているのが人件費です。事業によっては経費の80%や90%を人件費が占めているところもあり、コスト削減を考えるうえで決して無視できない項目になります。ただし、やみくもにスタッフの給与を削減することはおすすめしません。
ただでさえ人手不足が深刻な課題になっている介護業界において、人件費を必要以上に削減してしまうと人員が定着せず、サービスの品質低下に伴う売上の減少や信用損失につながるリスクがあります。売上や信用を回復するのは簡単なことではなく、新しい人材の確保や教育にもコストが発生するため、やみくもな人件費の削減は得策とは言えません。
"不要"な人件費の削減は事業の健全化を図るうえで欠かせないため、まずは業務の効率化による残業代の削減や雇用条件・賞与の見直しから検討してみましょう。
人件費の削減を考えるときに、まず着目したいのが「残業代」です。利用者の生命や家族・関連事業所との信頼関係に関わる理由での残業は別として、施設内の委員会活動や月末の事務処理などによる残業は、業務体制の見直しや事務作業の効率化によって解消したいコストになります。
業務の効率化を図るには、ノー残業デーの導入を目標に日頃の業務を一斉に見直してみるのが有効です。ノー残業デーを導入できれば残業代を削減できるほか、職員のリフレッシュにもつながり、業務への意欲向上も期待できます。
人件費を削減するなら、雇用条件や賞与の見直しも必要です。たとえば短時間勤務で補える部分は非正規職員を配置することで、正規職員を雇用するよりも人件費を抑えられます。また、介護職員処遇改善加算を算定できるように、研修制度やキャリアアップの支援、職務内容に応じた賃金体制の整備に取り組むのも良いでしょう。
ただし、雇用条件や賞与の見直しは職員の意欲を大きく下げかねないため、人手があってこそ成り立つ介護事業においては慎重に取り組むべき問題です。
水道料金を削減するには、まずは職員に対して節水を呼びかけ、日頃の行動を見直しながら節水に取り組むことが大切です。ただし、意識改革だけでは個人によって取り組み方にバラつきが出やすいため、節水効果の高い設備やグッズの活用をおすすめします。
たとえば食器洗い機を導入することで、手洗いよりも少ない水の量で食器を洗うことが可能。また、浴室のシャワーを節水型シャワーヘッドまたはオンオフ操作ができるヘッドに取り替えることでも、水の出しっぱなしを防げ、水道料金の削減につながります。
光熱費を削減するなら、省エネ効果の高い空調設備やエネファームなどの設置が効果的です。コストの問題で導入が難しい場合は、照明をLEDに切り替えたり、職員のエレベーター使用を禁止したり、空調の設定温度を決めたり、など身近なところから節電に取り組むと良いでしょう。また、光熱費を見える化して、職員の節電への意識向上を図るのも大切です。
そのほかにも、現在契約している電力会社より低価格帯のプランを提供しているところに切り替えることも、光熱費の削減につながります。
介護施設によっては、居室で使用するテレビの有料化や夜間の自動販売機の使用禁止など、利用者にも節電への協力を仰ぐところもあります。ただし、利用者からの不満や夜間の事故につながる可能性があるため、利用者への制限については十分に配慮して行なうようにしましょう。
介護施設で使用するトイレットペーパーやおむつ、洗剤などの消耗品は、どこから仕入れるかで価格が異なります。大量に購入するとなると数十円の差でも負担になるため、定期的に業者に相談したり、まとめ買いで割引が適用されるネットスーパーを利用したりなど、安い仕入れ先を模索することが大切です。
ただし、現場で実際に使用するものなので安さだけを重視せず、使い勝手や質の低下のリスクなども考慮しながら検討する必要があります。また、ユニットによって消耗品の使用量が大きく異なる場合もあるため、適正な使用方法について話し合いながら、必要に応じて改善していくと良いでしょう。
長期的なスパンで建物を賃借している場合、賃料の減額交渉を行なうことでコストを削減できる可能性があります。賃料の減額交渉は法的にも認められている行為のため、経営状況によっては交渉を検討することも大切です。ただし、賃料の減額交渉が難しいケースもあるので、外部の専門業者への交渉委託も選択肢として持っておくと良いでしょう。
賃料の減額交渉が難しいケースとしては、以下の例があげられます。
プリンターの印刷設定が最高品質になっていたり、インクの濃度が高の設定になっていたりすると、印刷コストが無駄にかかっている可能性があります。印刷の品質にこだわらない印刷物であれば、業務の支障にならない範囲で設定を変更しておくのがおすすめ。また、トナーセーブモードやリサイクルトナーの活用も、印刷コストの削減につながります。
そのほかにも、記録用紙や広報誌などの印刷を外注している場合、施設内で作成・印刷すれば大幅なコスト減を叶えることが可能。また、印刷物に応じて、ペーパーレス化を検討するのもコスト削減において有効な手段です。
利用者や介護士を募集するための広告は、介護施設の存続にかかわる必要経費です。そのため、広告費を削減したい場合は、広告の方法を見直すと良いでしょう。
安い広告費で募集をかけられる広告代理店を探すのはもちろん、SNSを有効活用するのもおすすめ。TwitterやInstagram、FacebookなどのSNSを上手く活用することで、多くの人の目にとまって利用者や介護士の獲得につながる可能性があります。
SNSを使った募集が成功すれば広告代理店を利用する必要がなくなり、広告費の大幅な削減を実現できます。
採用や研修にもコストがかかるため、せっかくかけたコストを無駄にしないように早期退職を回避することが大切です。入社後のミスマッチを防ぐには求人募集で誤解を招く表現は避けるほか、入社前面談を実施して求職者の疑問や不安解消に取り組むのも良いでしょう。
そのほかにも、会社の雰囲気や仕事内容をよく知る職員からの紹介であれば入社後のギャップを抑えられるため、早期退職の防止策として有効です。リファラル採用(縁故採用)を強化したい場合は、スタッフに紹介料を支払うインセンティブ制度の導入も検討してみましょう。
有料の求人広告媒体を利用するのであれば、費用対効果が得られているか定期的に見直すことも必要です。また、厚生労働省や自治体などが設けている雇用促進のための助成金を活用できないかどうかも、調べてみることをおすすめします。
介護事業者が利益を上げるには、コスト削減に向けた取り組みが重要です。ただし、そうした取り組みは長期的な積み重ねによって成果を出すものなので、今すぐに資金を調達したい場合、まずは資金繰りの問題を解消する必要があります。
介護事業者におすすめの資金調達法は「介護ファクタリング」と「介護報酬担保ローン」の2つ。それぞれの特徴やメリット・デメリットについて紹介します。
介護ファクタリングとは、介護報酬債権などの売掛債権を約8割程度で買い取ってもらう資金調達法です。請求から最短2日で資金化でき、担保や保証人が原則不要なところが魅力。借入扱いにならないので、銀行融資枠を温存できるメリットもあります。
手数料が発生するので受け取れる金額は少なくなってしまうものの、すぐに資金を調達したい介護事業者におすすめ。また、審査に通りやすいため、銀行から融資を断られた事業者に向いています。
ただし、介護ファクタリングは給料の前借りをしているようなものなので、一度利用すると資金の流れを元に戻すことが非常に難しく、自転車操業に陥るリスクを抱えているのが難点。資金化が早いというメリットだけに目を向けず、デメリットについてもしっかりと理解したうえで介護ファクタリングの利用を検討しましょう。
介護報酬担保ローンは、介護報酬債権を担保にして金融機関やノンバンクから融資を受ける方法です。借り入れ扱いになるというデメリットはありますが、まとまった金額の資金を調達することが可能。資金の使い道にも制限がないので、未納分の税金や借入金をまとめて返済したい、銀行融資までの繋ぎが欲しい、現在利用しているファクタリングを卒業したい事業者などにおすすめの資金調達法です。
また、経営状況に合わせて月々の返済額を相談できるため、返済計画を立てやすいのも介護報酬担保ローンならではの強み。自転車操業に陥りやすい介護ファクタリングと比べて、キャッシュフローを安定化しやすいメリットがあります。
銀行融資を受けられない中小の介護事業者におすすめなのが介護報酬担保ローンと介護ファクタリングを利用した資金調達方法。それぞれ目的に合ったおすすめの会社をご紹介します。
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・「保証人の有無」の記載
・「介護報酬担保ローン」プランの記載
(2022年3月7日調査時点)
※1.担保提供者の連帯保証が原則必要。また法人契約の場合は、代表者の連帯保証が原則必要
※2.追加融資の場合は最短即日
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(2022年3月7日調査時点)