介護事業者が利用者に介護サービスを提供したとき、その対価として支払われる介護報酬。その介護報酬を利用して資金を調達する方法があります。
本ページでは、介護報酬ファクタリングの仕組みや介護報酬ローンとの違い、メリット・デメリットを解説します。
介護報酬ファクタリングとは、介護報酬債権をファクタリングに売却することで現金化できる資金調達方法です。
保険適用の介護サービスを提供している介護事業者や障害福祉事業者、デイサービス事業者などが利用できます。
介護報酬は本来、入金までに2カ月~3ヵ月程度かかりますが、介護報酬ファクタリングを利用すれば最短即日で現金化できます。ファクタリング会社からは、あらかじめ手数料が差し引かれた売却額が入金されます。
介護報酬の入金日にはファクタリング会社に介護報酬債権分が支払われる仕組みとなっており、介護報酬が入るまでの資金繰りとして活用できます。
介護報酬ファクタリングは融資ではなく、あくまでも介護報酬権の譲渡であり売買契約です。そのため、借入やローンにはならず、決算の借入負債にも計上されません。
したがって毎月の返済も発生せず、先に報酬額から手数料を差し引かれた金額だけが手元に入ります。一方、介護報酬ローンは、介護報酬債権を担保として銀行などの金融機関から融資を受ける方法です。
介護報酬額以上に融資を受けられる可能性はありますが、借入である以上、借入負債に計上されますし、ローンの元本と利息の返済も必要です。
一般企業が利用しているようなファクタリングサービスには、大きく分けて「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の2つがあります。
利用者とファクタリング会社で契約を結ぶのが2社間ファクタリングで、利用者とファクタリング会社、取引先(売掛先)が関与するのが3社間ファクタリングです。
介護報酬ファクタリングは、このうちの「3社間ファクタリング」と同じ。売掛先が直接ファクタリング会社に売掛金を支払う仕組みとなっています。
介護報酬債権をめぐる3社間ファクタリングでは、このときの利用者(介護事業者)の「取引先」は、国保や社保などの公共機関となります。
一般的なファクタリングであれば取引先に経営難を懸念されるリスクがありますが、公共機関なので風評被害やその後の影響を心配する必要がありません。
また、取引先が公共機関になるため、債権譲渡通知や譲渡承諾に関するハードルが低い、確実性の高い債権であり一般的なファクタリングよりも手数料が低めに設定されている点も、契約のしやすさにつながっています。
介護報酬は、利用者にサービスを提供してから入金されるまでに約2カ月かかります。支払サイトが長いため、急な支出が増えると資金繰りの調達に困るケースも少なくありません。
銀行融資などの資金調達においても、融資がおりる決定までに数か月が必要です。介護報酬ファクタリングは早ければ即日入金されるので、長くて1.5ヵ月以上の入金期間を短縮できます。
退職金などの人件費や税品の支払いなど、早急に現金が必要になったときに迅速な資金調達が可能です。
介護報酬ファクタリングは介護報酬債権を売却することであり、融資による借り入れではありません。ローンのように毎月の融資額を返済する必要もありませんし、ファクタリング実行時にはすでに手数料が差し引かれているので、別途支払は不要です。
将来の財務面を圧迫される心配が少ない点もメリットのひとつと言えます。
介護報酬ファクタリングは、一般的なファクタリングと比較して手数料が格安です。一般的な業種における2社間ファクタリングでは、2~20%、3社間ファクタリングは1~9%が相場ですが、介護報酬ファクタリングの場合は0.2~2%が相場となっています。
これは、介護報酬債権の支払いをするのが国保や社保などの公共機関となるためで、倒産や未払い、延滞などのリスクがほぼなく、確実に介護報酬債権を回収できる点が手数料の低さに反映されています。
ファクタリングの場合、審査の対象は利用者ではなく取引先の信用力となります。
介護報酬債権では審査の対象が国保や社保などの「国」ですので、倒産リスクがなく売掛金が未回収となる貸し倒れリスクもありません。そのため、審査の難易度が低く柔軟で有利な条件で利用できる可能性が高くなります。
介護報酬ファクタリングの売買手数料の相場が一般的な3社間ファクタリングよりも低く設定されている点も、取引先(売掛先)の信用の高さが影響していると言えます。
介護報酬ファクタリングを利用すると、初回利用に限り2カ月分の介護報酬を受け取ることができます。
介護報酬は、前月分の介護報酬を翌月10日〆で請求すると、請求した翌月25日に入金されるようになっています。そのため、月の10日以降に利用すると、ファクタリング会社の譲渡対象となるのは前々月と前月の2カ月分の介護報酬債権です。そのため、初回利用に限り2か月分が入金されることとなります。
ただし、ファクタリング会社によっては売買できるのが「直近の1か月分のみ」と限定されているところもあるため、ファクタリング会社の条件を比較して選ぶ必要があります。
介護報酬ファクタリングは、開業1年目など実績が少ない時期にも利用できます。融資やローンなどの資金調達方法は実績の少ない開業直後などに審査を通過するのは困難ですが、介護ファクタリングであれば、介護報酬債権さえあれば開業直後であっても審査に通過します。ただし、ファクタリング会社によっては決算書が必要な場合もあります。
開業直後に利用したい場合は、決算書が不要なファクタリング会社を選ぶと良いでしょう。
ファクタリングの場合、融資やローンではなく債権の売買契約となるため、何度利用しても事業所の負債になりません。
決算書の借入金への計上も不要なので、バランスシートに悪影響を与える心配も不要です。将来的な銀行からの融資を見据えているのであれば、負債を増やさず決算書の状態も良好に保てる介護報酬ファクタリングは有効と言えるでしょう。
介護報酬ファクタリングを利用すると、債権を譲渡するための手数料がかかります。そうなると当然、本来受け取ることのできる報酬額よりも少なくなる点がデメリットです。
一般的なファクタリングと比べて売買手数料が安いとは言え、もともと得られるはずの介護報酬を目減りさせてしまうことに変わりはありません。繰り返しの利用によって利益が減り続けると留意した上で、慎重に利用に踏み切る必要があります。
介護報酬ファクタリングを利用すると、入金期日よりも前倒しで介護報酬を現金化することができます。2カ月先まで待つことなく資金を手にできるので、一次的な資金繰りに困った際に大変重宝するでしょう。
ただし、ファクタリングの利用しすぎには注意が必要です。介護報酬ファクタリングを利用すればするほど手数料がかかるため、本来事業所に入金されるべき介護報酬額が減り、利益も少なくなります。
また、入金を前倒しした分、サービス利用後は次の入金日までの期間が長くなります。すると次の入金日までの資金繰りに困って再び利用する、翌月も苦しくなったら利用するといった悪循環に陥り、サービスに依存してしまう可能性もあるでしょう。
一次的な資金調達のために介護報酬ファクタリングを利用するのであれば、事前に期間を決めて計画的に利用することが大切です。
介護報酬ファクタリングで調達できる資金は、介護報酬債権額が上限です。銀行などの融資の場合は保有資産を超えた額の資金を調達できる可能性はありますが、介護報酬ファクタリングはあくまでも債権の現金化のため、債権額を超えた金額を調達することはできません。
より多額の資金調達が必要な場合には、別の資金調達方法を模索しなくてはならないのが実情です。
銀行融資を受けられない中小の介護事業者におすすめなのが介護報酬担保ローンと介護ファクタリングを利用した資金調達方法。それぞれ目的に合ったおすすめの会社をご紹介します。
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