新型コロナウイルス感染症拡大の影響により売り上げが減少し、資金繰りに困っている介護事業者の方も多いでしょう。社会経済活動も少しずつ正常化に向けての動きを見せていますが、介護事業者の方にとっては今後も予断を許さない状況が続いていくと予想されます。
資金調達として融資制度の利用を検討している介護事業者の方に向けて、「福祉医療機構の福祉貸付事業」「日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付」を紹介します。
福祉医療機構は、福祉や医療施設への貸付事業を行なっている厚生労働省所管の独立行政法人です。コロナ融資制度としては、新型コロナウイルス感染症の影響で事業の継続に支障がある福祉関係施設を対象に経営資金の融資を実施しています。
福祉医療機構の融資制度を利用すると、6,000万(新型コロナウイルス感染者が出たことによる休業等で減収となった施設は1億円)を限度とした融資額を無担保で受け取ることが可能。法人ではなく施設単位での上限金額となり、複数の施設を展開している法人の場合はそれぞれの施設で6,000万または1億円を上限とした融資を無担保で受けられます。
相談機関によっては融資を受けられる事業規模に制限を設けているところもあるなか、福祉医療機関のコロナ融資は事業規模に対象要件を設けていないのが特徴です。また、貸付金利に一定の利率を上乗せして支払うことで利用できる保証人不要制度も用意されています。
貸付対象:前年同期などと比較して減収若しくは利用者が減少又は自治体からの休止要請に対応など、新型コロナウイルス感染症により経営に影響を受けた場合
貸付対象:施設利用者又は従業員及びその家族に、新型コロナウイルスの感染者が出たことによる休業等により、減収となった入所施設(地域密着型を除く)
福祉医療機構の借入申込金額の上限目安は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた月と受ける前の年(前年・2年前・3年前)の同月を比較した際の減収額の12ヶ月分です。どのぐらいの借入を申請できるのかについては、福祉医療機構の公式HPで提供されている申込書(「新型コロナウイルス感染症に伴う経営資金に係る補足説明」(提出書類2)」)で融資額の上限目安を算出できます。
注意したいのが、日本政策金融公庫からコロナ融資をすでに受けている場合、福祉医療機構のコロナ融資は利用できない点。そのため、貸付利率や限度額、期間などの条件を比較しながら、慎重に検討する必要があります。
また、福祉医療機構の拠点は東京と大阪にしかなく、遠方の事業者は手続きに時間を要する可能性があることは留意しておいたほうが良いでしょう。
日本政策金融公庫は、2008年10月に国の全額出資でつくられた政策金融機関です。一般の金融機関の補完的な役割を担っており、銀行などから融資を受けるのが難しい中小企業や零細企業、新しく起業をする方への融資を積極的に行なっています。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けている事業者を対象とした融資制度としては、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」を実施。「国民生活事業」と「中小企業事業」の2つの窓口を設けており、どの窓口で申請するかで融資限度額が異なります。
国民生活事業の融資限度額は8,000万円(※1)で、中小企業事業は6億円(※2)です。国民生活事業の対象となるのは小規模事業者または個人事業主で、国民生活事業と中小企業事業のどちらに該当するのかについては日本政策公庫にご相談ください。
貸付対象:新型コロナウイルス感染症の影響を受け、次のいずれにも当てはまる方
1.最近1ヵ月間の売上高または過去6ヵ月(最近1ヵ月を含む。)の平均売上高が前4年のいずれかの年の同期に比し5%以上減少していることまたはこれと同様の状況にあること
2.中長期的にみて、業況が回復し、かつ、発展することが見込まれること
日本政策金融公庫では民間の金融機関からの融資を受けにくい会社や個人事業主への支援を積極的に行なっているため、ほかの相談機関で審査が通らなかった事業者でも融資を受けられる可能性があります。
ただし、創業後3ヶ月未満の事業者は、新型コロナウイルス感染症特別貸付の融資を利用できません。創業して間もない事業者で融資を希望する場合は、そのほかの新規開業資金や起業家支援資金などの融資制度を利用できる可能性があるため、日本政策金融公庫に相談してみましょう。
過去に新型コロナウイルス感染症特別貸付の融資を受けたものの、資金繰りが悪化した場合は、融資の相談を再度行うことが可能です。
新型コロナウイルス感染症特別貸付の申請はインターネットまたは郵送で行なえますが、初めて利用する事業者は最寄りの支店での面談が必要になります。日本政策金融公庫の支店は北海道から九州まで全国150拠点以上あるため、日本政策金融公庫の公式HPで最寄りの支店を確認しておくと良いでしょう。
今回紹介した福祉医療機構や日本政策金融公庫でもそうですが、コロナ融資は据置期間が最長5年と長く設定されている傾向にあります。据置期間とは、元本の返済が猶予されて利息分の支払いだけで済む期間のことです。
据置期間があることでその間は事業に集中でき、資金繰りを安定させやすいというメリットはありますが、一方で借入完済までの期間が長期化することは留意しておかないといけません。あくまでも元本の返済が猶予されているだけなので、据置期間の終了後に返済に困ることがないよう、必要な売上や利益、固定費の削減の程度などを明確にして返済計画を立てることが大切です。
借入期間中に介護報酬の改定も行なわれるはずなので、報酬改定の情報も収集しながら定期的に返済計画の見直しを行ないましょう。
介護事業者がとれる資金ショートの防止策としては融資制度のほかに、介護給付費を早めに受け取るのも有効な手段です。ただし、介護給付費は請求から支払いまでにタイムラグが生じるため、経営維持に必要な資金を早めに調達したい場合は、介護報酬担保ローンや介護ファクタリングを検討しましょう。
介護報酬担保ローンは、介護給付費を担保に融資を受けられる方法のことです。まとまった資金を調達できるため、「未納分の税金や借入金をまとめて返済したい」「銀行融資までの繋ぎがほしい」「現在利用している介護ファクタリングを辞めたい」などのケースに適しています。
介護ファクタリングは、介護報酬債権の譲渡を条件に介護給付費を約8割程度で買い取ってもらう方法のこと。通常受け取りに2~3ヶ月かかる介護給付費を最短2日で資金化できるのが魅力です。どちらもメリット・デメリットがあるため、それぞれの違いを踏まえながら利用を検討してみましょう。
職員の感染や濃厚接触者になったことでの待機期間など、新型コロナウイルス感染症に伴う事情で職員が出勤できず、一時的に人員配置基準を満たせなくなる場合があります。超高齢社会を迎えている日本において介護事業は社会に不可欠なサービスのため、介護報酬が減額されないようにとサービスを休止してしまうと、大きな混乱を招いてしまうでしょう。
新型コロナウイルス感染症に伴う事情で一時的に基準を満たせない場合、人員基準が臨時的に緩和され、少ない人数での運営が認められています。自治体によって対応が異なる場合があるため、詳しくは自治体にご相談ください。
また、東京都では新型コロナウイルス感染症の影響で介護職員に不足が生じた場合、都が代替職員を派遣する「代替職員の確保による応援体制強化事業」を展開しています。都内の事業者は人員不足に陥った場合の対応策として、詳細を確認しておくと良いでしょう。
借り入れの返済や納税がままならない場合の対応策として、支払いを猶予してもらえないか検討してみましょう。
借り入れの返済が難しい場合、金融機関に相談することで返済額の一時的な減額や返済の据え置き期間を設けてもらえる可能性があります。次の融資が難しくなるかもしれないというデメリットはあるものの、借り入れのリスケジュールができれば出費の負担を抑えられ、資金ショートを回避することができます。
また、新型コロナウイルスの影響で納税が難しい場合は、財務省が設けている納税猶予制度を活用しましょう。2020年2月2日以降に前年度より20%以上の収益が減少した月が1ヶ月以上ある事業者が対象となり、担保や遅延金なしで納税を1年間猶予してもらえます。
介護施設は感染症に対する抵抗力の弱い高齢者の生活の場となるため、新型コロナウイルス感染症をはじめ、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症への対策が必要です。
厚生労働省は、感染予防を呼びかける「社会福祉施設等における感染拡大防止のための留意点について(その2)」を2020年4月に提示。感染防止に向けた職員間の情報共有・連携の実施、感染防止の対策を検討するための委員会の設置や取り組み方針の再検討および再徹底、利用者や職員の健康状態への留意などを求める内容になっています。
また、3密を可能な限り避けるために、利用者数を減らしたり、換気の励行やマスクを着用したりなどの取り組みも必要です。送迎時の対策や感染者が発生した場合の対応などについても、しっかりと話し合っておきましょう
感染防止策を話し合う際、厚生労働省が提示している「高齢者介護施設における感染対策マニュアル」についても確認しておくことをおすすめします。
高齢者は感染症にかかると重症化しやすいため、サービスを提供するスタッフは日頃から細心の注意を払う必要があります。また、利用者の心身の不調や感染症の収束の見通しがつかないことへの不安などもあり、大きな心理的ストレスを抱えやすい状況です。そのため、スタッフのメンタルヘルス(心の健康)へのケアが、これまで以上に重要になってきます。
メンタルヘルスのケアとしては、ストレスチェックの実施をはじめ、職場環境の改善やスタッフに対する相談対応、産業医などによるケア、職場復帰の支援などがあげられます。スタッフが元気に働ける職場環境を実現するために、厚生労働省が提示している「新型コロナウイルス感染症に対応する介護施設等の職員のためのサポートガイド」を参考にしながら、スタッフのメンタルヘルスケアの取り組みについて検討しましょう。
銀行融資を受けられない中小の介護事業者におすすめなのが介護報酬担保ローンと介護ファクタリングを利用した資金調達方法。それぞれ目的に合ったおすすめの会社をご紹介します。
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(2022年3月7日調査時点)
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(2022年3月7日調査時点)